コーディという町でボブと出会った。若い頃早撃ちで名を馳せたという彼は生っ粋のカウボーイ。シャワーを浴びる時と寝る時以外は決してカウボーイ・ハットをとらないという。物静かで温和な男だが、彼が見せてくれた射撃の技術には度胆を抜かれた。なんと手鏡を覗きながら、背にした的を後ろ向きのまま射ぬ
いてしまうのだ。彼は歴史家でもある。古き良き西部を残そうと、開拓時代の古い建物を各地から集め、博物館、というより、ちょっとしたテーマ・パークまで作ってしまった。60歳になったというボブだが、何年も着古されてきたであろうカウボーイ・ハットやブーツ、額に深く刻み込まれた皺・・・そこには本物の西部の男の顔があった。
僕が宿にした牧場には、住み込みで働く若いカウボーイがいた。ブレントというまだ21歳の青年で実に良く働く。日の出から夜の8時、9時まで食事の時間を除いて働き続けている。50頭ほどいる馬の世話に加え、今年は極端に雨が少ないので、放牧している牛たちに干し草を与えなくてはならないという。都会ずれしたところが全然なくて、素朴でいい奴だ。車で15分くらい走ったところにバッファローという町があるのだが、たまには町へ出るのかと尋ねると、人口3千人に過ぎない小さな町にも関わらず「人が多すぎて疲れる・・」と、ほとんど出かけることはないらしい。若いながらもカウボーイとしてすでに一人前の仕事をこなすブレントの夢は、将来自分自身の牧場を持つことだという。
撃ち合いのシーンとは別に、西部のイメージとしてもう一つ浮かんでくるのがロデオだ。各地から集まってきた強者達が賞金をかけてその技術を競い合う。賞金の高い大きなイベントになると、トップレベルのカウボーイ達が全国からやってくる。時間にして一人当り10数秒、跳ね狂う馬やブルの背中で悪戦苦闘するカウボーイに観衆の視線が集中する。荒々しくも華麗なその乗馬(?)技術には、観客から惜しみない拍手が送られる。シュートで出番を待つ男達の表情も真剣だ。ここにもまた西部の男達の顔があった。
19世紀の終わり、カリフォルニアのゴールドとオレゴンの肥沃な土地を目指した開拓民達。彼等の一部は、通
過地点のワイオミングを定住の地として選んだ。己の腕ひとつで土地を開拓し、アメリカの原点ともいえる大西部の小さな町々を築き上げた彼等のフロンティア精神は、21世紀を迎えた今でもワイルド・ウエストを生きる男達の体内に宿っているのだろう。